特別支援のミーティング
イギリスの小学校に転校してから初めての担任の先生との保護者面談がありました。その時に「息子さんは特別教育支援(Special Education Needs:SEN)の生徒ですので、特別支援の教師との保護者面談もあります。」と言われました。
担任の先生の保護者面談と違い、息子を通さず直接学校からの電話で面談日が決まりました。
担任の先生との面談場所はクラスの教室だったのに、今回の面談は校長室で行われました。
挨拶して入ると部屋に待っていた面談担当の先生の人数が3名と知って少しびっくり。
3名の先生の一人は息子をクラスでサポートしてくれる顔見知りの副担任の先生
もう一人は初めてお会いする先生で息子の個別支援の先生
最後の一人は息子とも面識がないという教育委員会(Local Education Authority:LEA)の先生でした。
初めてお会いする先生が2名もいて、担任の先生との保護者面談とは違う重々しい雰囲気に少し気が引いた母。
これが、IEPミーティングと呼ばれる特別支援教育(SEN)の児童の為の支援チームのミーティングでした。
このミーティングには必ず児童の保護者も出席することが要求されています。
IEPってなに?
IEPは、英国では『Individualized Education Plan』と呼ばれる生徒一人ひとりの為に作られる個別の教育計画表です。IEPは特別教育支援(Special Education Needs、略してSEN)を必要とする個々の児童の為に作られて、その生徒に携わる先生やサポーターの教育指導の目安となります。
息子はSENの生徒として、週2回 英語の個別指導を受けていました。
英語の個別指導は外部の専門の先生が息子専用のIEPに従って行います。
英語の個別授業以外の学習サポートにおいては学校のSENの資格を持った先生や副担任の先生が、やはりこのIEPに従ってクラスでの授業や少人数の取り出し授業の時に息子の学習サポートを行っていきます。
突然3人の先生との面談と知って思わず気持ちが引いてしまった母とは反対に、どの先生もとても朗らかでした。
特に教育委員会の先生は「なぜこの人がいるのかしら???」と不思議がる両親に「息子さんとは面識がないが、彼のことはこの2名の先生や学校のSENCO(SENコーディネーター)の先生からよく聞いて知っています。息子さんの学習カリキュラム(IEP)は私が作成しています。」と説明してくれました。
そして、息子のIEPを見せてくれました。
イギリスの特別支援の教育計画表(IEP) |
IEPには必ず学習における「ターゲット」「方法・戦略」「結果」が書かれています。通常、3つから4つの短期的目標をあげています。
その他に児童の得意・不得意および不安となる材料、IEPがどのようにコーディネートされているか特別支援およびサポートチーム詳細、達成までの期間、IEPの見直しのタイムライン、学習サポート以外に提供されているサポートが含まれる場合もあります。
息子のIEPにも以下の項目がありました。
- Target to be achieved (達成するべきターゲット)
- Achievement Criteria (達成基準)
- Possible resources (利用できる資料)
- Possible Class Strategy (利用できる教室でのストラテジー)
- Ideas for support/TA (支援の仕方/ティーチングアシスタント)
- Outcomes (結果)
このIEPは決して個別指導および特別支援を行う先生のみが利用するものではなく、担任の先生およびその児童に携わる学校の全ての先生がこのIEPを理解して、必要なフィードバックをSENCOと呼ばれるSENのコーディネートの先生に行います。
そのフィードバックはSENCOの先生を通してIEPを作成する専門家の先生に届き、IEPの見直しが行われます。
IEPの見直しは、年数回行われて、最低でも6ヶ月に1回は見直しが行われます。
息子のIEPミーティングは2学期のはじめに行われたので、結果は記入されていませんでしたが、見直しは新学年が始まってから10月、12月とすでに2度行われていました。
IEPは英語や算数などの教科の学習だけを目的にされていません。コミニュケーションや社会的スキルの分野も含めてターゲットを設定して指導が行われます。
教育委員会の先生も、日本で生活、不登校だったこと、バイリンガルであること等息子に関して幅広く興味を持って保護者の話を聞いてくれました。そして、息子に普段は接していないのに、体育が得意なこと、シャイだけど的確な話し方を誰ともできること等息子のことをよく知っていました。
この日に初めて息子の転校時に行われたアセスメントのテスト用紙も見せてもらいました。
英語が書けないのでほとんど白紙のテスト用紙。
アルファベットどころか数字も書けない部分が多くありました。
「このテストの結果を見て、私達には、息子さんが学習のサポートがどのくらい必要がわかります。」と副担任の先生からのコメント。
不登校時代を彷彿させる真っ白な回答用紙。
『はい、彼に学習支援が必要なのは、誰が見てもわかるでしょう。』と母は思うとともに、テストの行われた日からわずか数ヶ月で息子の学力が大きく変わったことを感じました。
日本からイギリスの学校へ転校して、英語圏以外の国からの転校生ということで特別支援(SEN)の生徒と認められた息子。
学校へ通えるようになってラッキー。学校で個別指導が受けられてラッキー。教室の授業でもサポートの先生がついてくれてラッキー。なんて思いながらも、どんどん自信をつけて変わっていく息子をみて母は不思議でした。
しかし、彼の変化の裏にはこんなイギリスの学校教育の支援システムがあったのでした。
息子は学校の内外を通して大きな教育支援システムのネットに支えられていたんだと初めて気が付かされたIEPミーティングでした。
ただ、息子がイギリスの小学校ですぐに特別教育支援を受ける事ができたのはラッキーだったのかなと思うこともあります。なぜなら、イギリスの学校でSENの生徒として認めてもらうのに時間がかかったり、十分な適宜な指導が行われていないと感じる児童や保護者もいるからです。
イギリスにSEN専門の弁護士がいたりするのはその実情を裏付けているのではないかと思います。
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参照: 英国 The National Autistic Society http://www.autism.org.uk/, 英国政府https://www.gov.uk/children-with-special-educational-needs/overview,
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