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Wales, United Kingdom
日本と英国を行き来する2人のバイリンガルキッズの母。ロンドンで生まれた子供たちを連れて日本へ。横浜で英語で創作絵本を作るキッズ・クリエイティブ・ライティングの教室を開き、英語の絵本の出版。小学校で不登校になった息子を連れて、またまた英国へ。イギリスの自然と息子のテニス・トーナメントの応援と野菜作りを楽しむ日々を過ごしていましたが、社会人学生として大学に入学。
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2016年1月6日水曜日

イギリスの不登校生

不登校生とフッディー 

フード付きのパーカーはHoodie(フッディー、フーディー)と言ってイギリスでは一時フットボールフーリガンや不良のシンボルとして良いイメージが無かったのですが、今ではそんなイメージも薄れてきて相変わらずファッションとして人気のアイテムです。 

息子も幼稚園の頃からフーディーが大好きでした。
でも不登校生になってからのある日、外出時にこのフーディーで頭をすっぽりと隠すようになりました。

まるで何か悪いことをしているかのように自分の顔を隠すように下を向き歩く小学生の息子。
その息子の姿は不良としてメディアで取り上げられていたイギリスの青年たちを思い出させました。

その後、同じように自分の顔を隠すようにフーディーや帽子をかぶっている不登校生の子供達を見ることがありました。

まるで悪いことをしているようになぜ顔を隠さないといけないの。
不登校生の親の心が一番痛む時でした。 

イギリスの不登校生 

「ディスレクシアって知っていますか?」と聞かれたのは日本語レッスンのボランティアに行った時。 

学校が怖くて行けないスクールフォビア(School Forbia)になったことがある子供達は5人に一人いると言われているイギリス。

「英語だとコミュニケーションがうまく取れないので学校に行っていないの。」と紹介されてたイギリス人の女の子は私が初めて会ったイギリスの不登校生でした。

いつも着てるというウォンジー(Onesie)のフードを深くかぶって現れた彼女は私に日本での不登校時代を思い出させました。

 週に1回の日本語のレッスンにお母さんと特別支援の日本人学生のサポーターに付き添われて参加している彼女。

学校に行かず人に会うことが苦手で外に出ることもままならない彼女。 
日本の漫画やアニメが大好きで日本語の勉強の為なら家から出かけることができることがわかり、 車で往復2時間かけて日本語のレッスンに連れてきていると話してくれたお母さん。

 日本語以外だとコミュニケーションができないからイギリス人のクラスメートとも会話ができません。 

ボランティアとしてクラスのサポートに入った日本人の私には「勉強が大好きです。」と日本語で答えてくれます。 

学校には行けないけど、家でお母さんが勉強を教えてくれると話してくれました。
「お母さんは頭がいいです。」と教えてくれました。 

彼女のノートに書かれた日本語はまるで印刷された字のように綺麗でした。 

2時間の日本語のレッスン中、娘さんに付き添ってずーっと隣に座っているお母さん。 時々、娘に日本語で質問されては「私にはわからないから振らないで。」と少し笑いながら英語で答えるお母さん。 

不登校時代にどこに行くにも一緒に息子に付き添っていた自分を見ているようでした。 

学校にこのまま行かれず将来どうなるのだろう。
先の見えないトンネルの中でなんとか少しでの将来に希望を持てることができたらと祈っていた毎日でした。

 会話のレッスンの為に机を挟んで向かい合って座っていた私でしたが、私の心はずーっとこの母娘の側にありました。

 日本の漫画の「One Piece (ワンピース)」が大好きという彼女。
息子の好きなHunterxHunter(ハンターハンター)の漫画の話をすると自分も好きだと嬉しそうに大好きなキャラクターの話をしてくれました。 

楽しい会話に夢中になっていてもふとフードの端に手をおいては深くかぶり直す彼女。
その度に私の心の隅が痛くなりました。 

イギリスで日本語を勉強するきっかけになるマンガ 大人気なのはOne Piece
 英国の日本語教室の生徒に人気のワンピースのマンガ

ディスレクシアや不登校を助ける日本文化

「彼女は英語でのコミュニケーションがダメだから英語だとメールもできないの。メールもコミュニケーションの一種だから。」と教えてくれた日本語教室の先生。

 「でも、日本語でなら会話ができることが分かったのよ。」
この間ロンドンのコミコンに行ってきた時に日本語なら他人と会話できることが分かったとお母さんが教えてくれたそうです。

日本語を通して娘が社会復帰できたらと将来への希望を持ち始めたというお母さん。 

「英語だとディスレクシアでも、日本語だと字を読んだり書いたりできるので日本語のレッスンに来ているイギリス人の人が結構います。」

「日本の漫画やアニメがきっかけで日本語に興味を持ってみたら、実は日本語ならディスレクシアの問題がないことが分かったりするみたい。」という先生の話。

 日本の文化がこんな風にイギリスの不登校生に楽しみを与えて社会へのつながりや将来への希望の手がかりになっていることは大変嬉しいことです。 

日本の文化がこんな風にイギリスの不登校生を楽しませて、社会へのつながりや手がかり、将来への希望を与えていることは日本人の私には大変嬉しいことです。 

これからも日本の文化が海を越えディスレクシアや学習障害で困っているイギリスの子供達をより多く助けることができたら。 

そして、この子たちのためにも日本語のGCSEやAレベルの試験がイギリスで続行されていくことを心の底から祈っています。


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関連する記事:




参照:
Netmums.com 「Is your child worried or anxious about going to school? - School phobia」2003年

テレグラフ紙  [My daughter refused to go to school - for five years」 2014年

2015年10月30日金曜日

イギリスの大学 ディスレクシアの認知度

ディスレクシア課とディスレクシアテスト


イギリスの大学へ社会人学生として入学が認められた私の元へこんなメールが届きました。
「成人学生の中にディスレクシアの生徒の割合が多いことからオンラインテストを受けてください。」 
メールと一緒に送られきたリンクを開いて自宅でオンラインでできるディスレクシアのテストは20分で終わりました。

始業式が終わり大学の学生課に初めていくと階段の踊り場にこんな案内表示がありました。学生課、福祉課、キャリアセンターと並んで「ディスレクシア課」

ディスレクシアの学生がいかに多いかと認識させられます。

大学の案内表示にもディスレクシア課
大学の案内表示にディスレクシア課


 英国ディスレクシア協会によるとイギリスでは人口の10%がディスレクシアでその内4%は深刻なディスレクシアとのこと。約7百万人以上いるディスレクシア人口のうち85%が成人で、その半数は自分がディスレクシアと知らずに生活しているとのこと。

ディスレクシア協会ができてから40年がたち、ディスレクシアの認知度も進み支援があれば多くが高等教育進学および優秀な成績で卒業したり才能を開花する仕事につけることができるのが統計でわかるようになりました。

よい成績を残すディスレクシアの学生たち

 英国の経済成長担当省であるビジネス・イノベーション・職業技能省(BIS)もITの進化によりディスレクシアや学習障害を含む障害者の高等教育への進学者が増え、さらに優秀な成績を残していると支援の必要性を実感し効果的な支援方法を探求しています。

ビジネス・イノベーション・職業技能省の報告書HIGHER EDUCATION Disabled Students’ Allowances: Equality Analysis DECEMBER 2014
BIS報告書 高等教育レベルでの障害支援を成績結果

2014年のBIS報告書 によると高等教育レベルで認知および補助を受けている障害者は障害でない学生と比べてもよい成績を収める割合が多いとして、このデータを今後の支援方法などに生かす方針であるとまとめています。

ディスレクシア支援団体や協会もディスレクシアの認知がされ対応策が取られることによりディスレクシアの人たちが大学進学中やその後のキャリアで活躍が見られるとコメント。

オンラインでできるディスレクシアテストのお値段

学校レベルでのディスレクシアを含む学習障害の認知度が進む中、今までディスレクシアと知らなかったり今でも認知されずに生活を行っている社会人をどのように助けることができるかが課題になっているのですが。

ディスレクシアのテストはインターネット上で簡単にできて、値段も30-50ポンド(約6000円-1万円)程度。


イギリスの大学から送られてきたディスレクシアのオンラインテスト
私が受けたディスレクシアのオンラインテスト
大学からのパスワードを入れると無料で受けられる。


簡単にオンラインでできるテストで少しでも自覚することも次のステップへの手がかりになるのでは。。。

学習生活の中で苦労工夫をする分ディスレクシアの人が仕事場で高度な管理スキルなどを発揮することがわかってきました。

ディスレクシアなどの障害をテストするのだけでなく、これらのディスレクシアの人たちが持つ個々の持つ隠された才能を見つけるソフトも開発されています。

スポットタレントテスト ディスレクシアの人たちの才能を見つけるオンラインテスト
ディスレクシアの才能発見テストのソフト

ディスレクシアの気持ちになって本を読もう。

認知度の進む英国でもディスレクシアの人たちの間では認知されるまで時間がかかったり、周り人から理解を得ることができずつらい思いをしてすごす場合も多い。

大学へ行くまでディスレクシアとして認知されなかったデザイナーのダニエルさんはディスレクシアが本を読む時にどんな苦労や思いをしているかとディスレクシアの人の気持ちをフォントを使って表現しました。

 通常のアルファベットの文字の40%を削ったフォントで書かれた手紙。
「あなたは何分かけて読めますか?」

普通の人が読むとディスレクシアの人が通常の文章を読むのと同じスピードになる。
ディスレクシアのデザイナーの作ったフォント
このフォントで書かれた文章を読むとディスレクシアの人が通常の本を読む時の気持ちがわかる。

このフォントを発明したことで英国政府から注目されたダニエルさんは政府のディスレクシアの普及キャンペーン団体に就職しました。彼のフォントで書かれた本が出版されました。

この本を読むと時間がかかりディスクレシアの人が読書の際にどれだけ苦労をするのか実感できます。

 学習障害と呼ばれているディスレクシアですがコンピューターなどのサポートを受けることによって優秀な成績を残したりすばらしいキャリアを持てる可能性が多くなるんですね。

英国だけでなく日本も含めてディスレクシアに対する認知度が増えればと期待するばかりです。


ディスレクシアのデザイナーの作った本
普通の人がこの本を読むとディスレクシアが普通の本を読むのと同じくらいのスピードがかかる。
ディスクレシアのデザイナー ダニエルさんの本


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関連する記事:


参照:
Department for Business, Innovation and Skills,2014年12月報告書
「Higher Education; disabled Students’ Allowances:Equality Analysis」 

ADSHE:Association of Dyslexia Specialists in Higher Education 

British Dyslexia Association 「成人とディスレクシア40年が過ぎ 2012年報告書

デイリーメール紙 「ディスレクシアの気持ちになる読みのテスト」2015年 Zofagharifard. Ellie,
「Take the reading test that shows you what it’s like to be dyslexic: Font recreates the frustration felt by those with the condition」
ダニエル・ブリトン氏のサイト http://danielbritton.info/195836/2165784/design/dyslexia

2015年5月15日金曜日

ipadは学校のステイタス  ディスレクシアの子供達

ipadでの学校教育 

「私のクラスの様子を見せてあげる。」と言って小学校の先生をしている姪っ子がipadを持って遊びにきました。 

彼女は小学校の最年少の学年(レセブション)で5歳児の担任をしています。 
「教室に常備している」というipadには子供達が撮った写真や作った画像がいっぱい。

 「子供達が勝手に使っているから何を撮っているかわからない。」といいながら見せてくれました。 確かに頭が途切れたり足の先しか撮れていない写真も多いですが、いろいろと面白く加工された写真や画像がいっぱいありました。 

「すごい。これ、本当に5歳の子供達が作ったの?」と私も家族もびっくり。 

「このipadは教室用で、休み時間に子供達が勝手に使うから私もどうやっているのかわからないわ。」と担任教師も感嘆した口調です。 

ipadを利用した授業風景 写真:ガーディアン紙
ipadでの授業カリキュラム Stephen Perce Foundation (写真:ガーディアン紙)
「5歳の子供達が勝手に使うのでは高い機械が壊れたりしないの?」と思わず心配してしまう大人ですが、 「このプラスチックのカバーがついているから投げて落としたって壊れたりしないわよ。」と先生は澄まし顔。 

イギリスの学校では、今ipad が学校に何台あるかがステイタス。 
息子の小学校でも『ipadを何台購入しました。』と学校通信に誇らしげに発表していました。姪っ子の小学校では1クラスにipad1台と教師が授業に利用する為の2台はあると話してくれました。 

10年前に娘が入学したロンドンの小学校も各教室にコンピューターが1台あって、子供達が休み時間に勝手に使っていたのを見て驚いた私。 

今はワイヤレス、タブレット、ipadやスマートフォンの時代。
クラスにipad 1台どころか生徒一人に1台を与える学校も増えています。


イギリスの学校では当たり前のITを利用した授業で、日本の学校で不登校生だった為学習が遅れていた息子もすごく助けられました。 

「日本の学校でもipadを授業中に使えたらいいね。」
息子の友達でディスレクシアのお友達のことを思います。

ipadを利用した授業が増えているイギリスの学校  写真:ipads in primary
写真:ipads in primaryブログサイトから( www.ipadsinprimary.co.uk)


 ディスレクシアとコンピューター 


中学校になってからディスレクシアであるとわかった息子の友達。  漢字の読み書きが苦手、でもがんばって勉強してきました。 

「漢字を勉強させても全然覚えられなくて困っちゃうんだよね。」とお父さん。
「漢字の勉強をするとすごくストレスがたまっちゃうみたい。」とお母さん。

ご両親の表現は控えめですが、鉛筆を持ったまま何時間も机の前でフリーズしていた不登校時代の息子の姿が思わず目に浮かびます。 

何度、同じ漢字を書かせても覚えることができないのはなぜ?

ディスレクシアの難しいところは「ちょっと勉強が苦手な子?」というくらいにしか思わず親も教師もはじめは学習障害と疑わないことです。

本人はすごく努力していても「勉強が足りない。」「努力が足りない。」と誤解されやすいこと。 

アメリカ人の俳優のヘンリー・ウィンクラー(Henry Winkler)は31歳まで自分がディスレクシアと知りませんでした。「自分は馬鹿なだけだと思っていた。学校でも周りからも馬鹿だといわれ続けたから。。。」 

彼はディスレクシアと判明してから初めて読書を楽しめるようになりました。いまではディスレクシアの少年を主人公にしたハンク・ジップザー(Hank Zipzer)の本のシリーズの作家としても活躍し、2011年には女王様から大英帝国勲章(OBE:Order of the British Empire)を受賞しました。ハンク・ジップザーはテレビシリーズにもなりイギリスの国営テレビ局BBCで2014年から放映されています。 

ディスレクシアのハンクジップザーのお話 イギリスの国営放送局 BBCにて放送 
子供番組 CBBC で放映中 ハンク•ジップザー

息子がイギリスの小学校で授業中コンピューターを利用して勉強を許可されていることを伝えたら「コンピューターを使うのは得意だから学校でもコンピューターを使えるといいのに。」とディスレクシアの勉強法を探して東大の科学先端技術センターのディスレクシアプログラムにたどり着いたご両親はつぶやきます。

PCやipad などITを授業や試験で利用できれば、ディスレクシアの子供達も勉強しても努力が実らないというむなしい空回りが減るのに。。。ヘンリー・ウィンクラーのようにできないと思っていた読書も楽しめたり、何よりも自分が馬鹿ではないという自信を持つことができるのに。。。

ちなみにipadを全校生徒に1台づつ配給する『1:1 ipadプログラム』をイギリスでいち早く導入した セダース校によるとipadを与えても生徒がすぐ壊すのではという質問に対して、その割合は年間2%だけだと答えています。

この学校ではipadを利用して生徒達は読書をしたり、文章を書いたり、ゲームをしたり、検索をしたりするだけでなく、マインドマップ、メイル、音楽の作成や演奏、アニメーションやコンピュータープログラムの制作などと多様に利用しています。子供達が勉強する為に、また創造力の表現のツールとしてipadは一番効果的と言うイギリスの学校。

子供達には様々な能力がある。学校で一つのことができないからと言ってすべてが否定されてしまわないように、いかに子供のもつ才能を引き出せるか鍵は今の子供達の生活の一部になってきているITツールを学校でどれだけ利用できるかということかもしれません。


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関連する記事

 ディスレクシアと日本語 
イギリスの学校教育 苦手なことより得意なこと コンピューターを利用した支援教育 
イギリスの小学校 特別教育支援(SEN)の指導法

記事中で紹介した本

  


参照



2014年4月15日火曜日

イギリスの学校 特別支援教育(SEN)と個別教育計画(IEP)

特別支援のミーティング

イギリスの小学校に転校してから初めての担任の先生との保護者面談がありました。
その時に「息子さんは特別教育支援(Special Education Needs:SEN)の生徒ですので、特別支援の教師との保護者面談もあります。」と言われました。

担任の先生の保護者面談と違い、息子を通さず直接学校からの電話で面談日が決まりました。
担任の先生との面談場所はクラスの教室だったのに、今回の面談は校長室で行われました。
挨拶して入ると部屋に待っていた面談担当の先生の人数が3名と知って少しびっくり。

3名の先生の一人は息子をクラスでサポートしてくれる顔見知りの副担任の先生 
もう一人は初めてお会いする先生で息子の個別支援の先生 
最後の一人は息子とも面識がないという教育委員会(Local Education Authority:LEA)の先生でした。

初めてお会いする先生が2名もいて、担任の先生との保護者面談とは違う重々しい雰囲気に少し気が引いた母。

これが、IEPミーティングと呼ばれる特別支援教育(SEN)の児童の為の支援チームのミーティングでした。

このミーティングには必ず児童の保護者も出席することが要求されています。

IEPってなに? 

IEPは、英国では『Individualized Education Plan』と呼ばれる生徒一人ひとりの為に作られる個別の教育計画表です。

IEPは特別教育支援(Special Education Needs、略してSEN)を必要とする個々の児童の為に作られて、その生徒に携わる先生やサポーターの教育指導の目安となります。

息子はSENの生徒として、週2回 英語の個別指導を受けていました。
英語の個別指導は外部の専門の先生が息子専用のIEPに従って行います。 

英語の個別授業以外の学習サポートにおいては学校のSENの資格を持った先生や副担任の先生が、やはりこのIEPに従ってクラスでの授業や少人数の取り出し授業の時に息子の学習サポートを行っていきます。

 突然3人の先生との面談と知って思わず気持ちが引いてしまった母とは反対に、どの先生もとても朗らかでした。

特に教育委員会の先生は「なぜこの人がいるのかしら???」と不思議がる両親に「息子さんとは面識がないが、彼のことはこの2名の先生や学校のSENCO(SENコーディネーター)の先生からよく聞いて知っています。息子さんの学習カリキュラム(IEP)は私が作成しています。」と説明してくれました。

そして、息子のIEPを見せてくれました。
イギリスの教育制度 特別支援 教育計画表(IEP)
イギリスの特別支援の教育計画表(IEP)


 IEPには必ず学習における「ターゲット」「方法・戦略」「結果」が書かれています。通常、3つから4つの短期的目標をあげています。

その他に児童の得意・不得意および不安となる材料、IEPがどのようにコーディネートされているか特別支援およびサポートチーム詳細、達成までの期間、IEPの見直しのタイムライン、学習サポート以外に提供されているサポートが含まれる場合もあります。

息子のIEPにも以下の項目がありました。

  1. Target to be achieved (達成するべきターゲット)
  2.  Achievement Criteria (達成基準)
  3.  Possible resources  (利用できる資料)
  4. Possible Class Strategy (利用できる教室でのストラテジー)
  5. Ideas for support/TA (支援の仕方/ティーチングアシスタント)
  6. Outcomes (結果)


このIEPは決して個別指導および特別支援を行う先生のみが利用するものではなく、担任の先生およびその児童に携わる学校の全ての先生がこのIEPを理解して、必要なフィードバックをSENCOと呼ばれるSENのコーディネートの先生に行います。

そのフィードバックはSENCOの先生を通してIEPを作成する専門家の先生に届き、IEPの見直しが行われます。

 IEPの見直しは、年数回行われて、最低でも6ヶ月に1回は見直しが行われます。

息子のIEPミーティングは2学期のはじめに行われたので、結果は記入されていませんでしたが、見直しは新学年が始まってから10月、12月とすでに2度行われていました。

IEPは英語や算数などの教科の学習だけを目的にされていません。コミニュケーション社会的スキルの分野も含めてターゲットを設定して指導が行われます。

教育委員会の先生も、日本で生活、不登校だったこと、バイリンガルであること等息子に関して幅広く興味を持って保護者の話を聞いてくれました。そして、息子に普段は接していないのに、体育が得意なこと、シャイだけど的確な話し方を誰ともできること等息子のことをよく知っていました。

この日に初めて息子の転校時に行われたアセスメントのテスト用紙も見せてもらいました。

英語が書けないのでほとんど白紙のテスト用紙。
アルファベットどころか数字も書けない部分が多くありました。

「このテストの結果を見て、私達には、息子さんが学習のサポートがどのくらい必要がわかります。」と副担任の先生からのコメント。

不登校時代を彷彿させる真っ白な回答用紙。

 『はい、彼に学習支援が必要なのは、誰が見てもわかるでしょう。』と母は思うとともに、テストの行われた日からわずか数ヶ月で息子の学力が大きく変わったことを感じました。

日本からイギリスの学校へ転校して、英語圏以外の国からの転校生ということで特別支援(SEN)の生徒と認められた息子。

学校へ通えるようになってラッキー。学校で個別指導が受けられてラッキー。教室の授業でもサポートの先生がついてくれてラッキー。なんて思いながらも、どんどん自信をつけて変わっていく息子をみて母は不思議でした。

しかし、彼の変化の裏にはこんなイギリスの学校教育の支援システムがあったのでした。

息子は学校の内外を通して大きな教育支援システムのネットに支えられていたんだと初めて気が付かされたIEPミーティングでした。

ただ、息子がイギリスの小学校ですぐに特別教育支援を受ける事ができたのはラッキーだったのかなと思うこともあります。なぜなら、イギリスの学校でSENの生徒として認めてもらうのに時間がかかったり、十分な適宜な指導が行われていないと感じる児童や保護者もいるからです。

イギリスにSEN専門の弁護士がいたりするのはその実情を裏付けているのではないかと思います。


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参照: 英国 The National Autistic Society http://www.autism.org.uk/, 英国政府https://www.gov.uk/children-with-special-educational-needs/overview,



関連した記事

2014年3月20日木曜日

イギリスの小学校 特別教育支援(SEN)の指導法

先生へのクリスマスカードとプレゼント 

イギリスの幼稚園や小学校ではクリスマス休暇の前にお世話になった先生方にクリスマスカードを渡します。そのとき、チョコレートなど小さいプレゼントを渡すこともあります。

 日本から転校して初めてのイギリスのクリスマス。
 『お世話になった先生にカードとプレゼントでも渡さなくちゃ。』と母はそわそわします。

 担任の先生と副担任の先生と。。。副校長先生にも渡した方がいいかなぁ?

 3つのチョコレートの箱をきれいにラッピングしていると、息子がいいました。
「先生にあげるプレゼント3個じゃ足りないよ。僕が教えてもらっている先生は6人くらいいるよ。」

えっ、6人も?なんで?

「えーっと、担任の先生でしょ。教室での授業の時、僕をアシスタントしてくれる副担任の先生でしょう。それから英語の個別授業の先生でしょう。この先生には週2回授業を受けている。それから、算数の取り出し授業をしてくる先生でしょ。それから理科とかの取り出し授業の先生でしょう。他にも音楽の先生とかいるけど、まぁこれはいいや。」

毎週そんなに多くの先生にお世話になっていたのね。 

そういえば、『私もSENの資格を持っている教師です。』と言った副校長先生の説明を思い出しました。
転校前に初めての学校訪問でイギリスの学校の特別支援(SEN)の話を聞いたときでした。 


特別教育支援の方法

日本で不登校生だった息子は、イギリスの小学校に転校し、SENと呼ばれる特別教育支援(Special Education Need)の生徒として受け入れられました。
英語圏以外の国から来た生徒は英語教育の支援が必要と言う理由でした。 

転校した1週間目はSENの資格を持っている副校長先生ともう一人SENコーディネーターをしている先生が息子の様子をチェックします。これは、息子にどんな支援が必要か調べるアセスメントになります。

息子には審査されていると教えず、先生方がそっと授業に入ったり、休み時間には校庭で息子の様子を見るそうです。そして、担任の先生と話し合って息子に合う支援の計画を立てるそうです。

 そして、息子は英語の個別授業を週2回受けることになりました。この学習指導は朝礼の時間に行われました。他の生徒が朝礼に出ている間、息子は個別授業を受けていたわけです。
英語のアルファベットを書いたり、単語を覚えたりするこの英語の授業は彼のために作られた支援計画に従い、外部の先生が教えに来てくれます。

 英語の授業をクラスでみんなと一緒に受けるときは副担任(アシスタント・ティーチャー)の先生が息子の隣について、英語の書けない息子はコンピューターを使って授業を受けていました。

 不登校生だった息子は算数も同学年の生徒に比べて遅れていました。
算数も問題には英語を使うので、英語の授業だけでなく算数の授業も支援対象になります。
算数は取り出し授業で、クラスから3人のお友達と一緒に別室で少人数の取り出し授業を受けていました。 

体育や音楽以外はすべて英語の支援が必要と言うことで特別支援の対象になりました。
 歴史や地理の授業も取り出し授業として、2-3人の生徒が別室で担任以外の先生から授業を受けます。

「イギリスに住んでいなかったのですから、いきなりイギリスやヨーロッパの歴史や地理について学べと言われても無理でしょ。ロンドンってどこにあるか知ってる?イギリスの王様の名前知っている?」という話らしいです。

イギリスの学校 特別教育支援 英語の作文でもらった優秀賞
 英語の作文 賞状(Merit)


特別支援生として英語の個別サポートを受けているのは知っていましたが、他の教科の取り出し授業などへの支援は、転校していたばかりの5年生の時だけ受けられる話だと思っていました。
学年があがり6年生になってもこれらのサポートは同じようにずうっと続いていたのでした。

そして、6年生の2学期には、とうとう英語の作文でイギリスではMeritと呼ばれる優秀賞を息子はもらったのでした。



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2014年3月9日日曜日

イギリスの小学校 答えのない宿題

 答えのない宿題  

日本から転校した英国の小学校で、転校生ということで宿題が免除になった息子にもいよいよ宿題が出されました。
息子にはいきなりハードルの高い作文 
作文のように正解がはっきりわからない宿題は息子には難しい課題なのです。

「どんな答えを求められているのか」と悩む息子に 「好きなことを書けばいいのよ。」とリラックスさせようとするのですが、 宿題の紙を目の前に固まってしまう息子

毎朝晩その宿題の紙を前に時間が止まってしまったかのような息子
 父親も「6年生になって何がしたいか一つずつ表にしていこう。」と提案したり、息子と議論をしたり、家族全員で取り組む宿題。

先生から手書きが難しかったらコンピューターを使っても良しという許可が出ていましたが、自分で手書きにすると受けつけない息子。

『コンピューターだったら、親が書いてもわからないし、宿題も終わって楽なのに。。。』

白紙の宿題の紙を目の前に頭をたれてうずくまっている息子の背中を見ながら母はずるい気持ちになるのですが、絶対納得しない息子。

宿題が気になって、夜も何度も目が覚めてしまいます。
朝もいつもより目が覚めるのが早くなります。
母より早く目が覚めて、ダイニングテーブルで真っ白な作文用紙を目の前に座っている息子。

「だったら宿題しなくてもいいじゃない。先生に宿題が難しいといった方がいいんじゃない。」
宿題ができないことでまた不登校になったらどうしようと心配になってきた母に「絶対に先生に宿題のことを相談しないでね。」と釘を刺す息子。

 宿題提出の日が近づくに真っ暗な息子の寝室からすすり泣きが聞こえてきます。

提出期限の当日の朝、「学校に行けない。」という息子の言葉を半分予期しながら母は朝ごはんの支度をしていると、ダイニングルームに駆け込んできた息子。

「宿題はできなかったと先生に説明する。」といいながら、まっしろな作文用紙をカバンにしまいます。

 「あっ、そう。」元気に学校に出かけた息子の後ろ姿を見ながら、思わず気が抜けた母でした。

答えを出さなくていい宿題 

放課後、『白紙の宿題はどうなったのかなぁ。』一日中気になっていた母のもとに 元気に帰ってきた息子。

 「先生から、あの宿題は『君のための宿題』だから、提出しなくていいって言われた。」
「他の子は提出したけど、僕は宿題について考えたり取り組んだりしようとしたから、それだけで十分だって。」
 「お父さんと宿題についてどんなことを話したか聞かれて、こんなことを話したと説明したら、それで十分だと言われた。」

母にとってはよくわからない説明ですが、息子は十分納得したみたいです。

 君のための宿題 
子供たち一人一人勉強への取り組み方は違います。

 答えを書こうが書かないでいようかは問題じゃない。 
宿題の問題について考えただけでも十分な答えになる。 

答えを求められない宿題はそれからも息子にとって大きな励みになりました。
 なによりも宿題ができなくても先生に説明して納得してもらえたということが息子の一番の自信になったのでした。



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2014年2月6日木曜日

イギリスの小学校 転校生と宿題

転校2週間目

イギリスの小学校に転校して1週間がすぎました。
不登校生だった息子が果たして毎日学校へ通うことができるか。

ドキドキだった1週間目が終わり、2週間目のある朝 登校中にとつぜん息子が教えてくれました。
 「クラスで僕だけ宿題が出てないんだよ。」

 『えっ、宿題?』

 息子が毎朝、他の生徒に交じって小学校まで通学できるようになったことにびっくり。さらに学校が終わるまで教室でクラスメイトと一緒に授業を受けているということだけでもわが家にとってはすごいイベントなのです。
 宿題の事なんて頭に浮かばなかった母。

 転校して1週間目は不安を抱えての朝の通学路。
「怖い。怖い。」としか言わなかった息子が2週間目の今朝はやけにおしゃべりです。

「僕は転校生だから宿題は当分出さないって先生がクラスの皆の前で言ったんだ。」
「でも、『え~』とか『ずるーい』とかクラスの誰も言わなかったんだ。」
「みんなそんなの当たり前でしょって言う感じで。」
「日本の小学校だったらありえなかったよね。」

「クラスのみんなが宿題しているのに僕だけ宿題がでないなんて、日本の学校じゃ許されないでしょ。」

小学校1年生から4年生の終わりにイギリスへ転校するまで3年間不登校だった息子。
日本の学校の印象を初めて話した時でした。
息子が日本の小学校で何を感じていたのか初めて垣間見た瞬間でした。

 学校の好きなところ嫌いなところ 

小学1年生にして学校の行き渋りが始まりお休みが続いた2学期。
学校に行けない理由を突き止めようと父親は、
『がっこうのすきなこときらいなことトップ10』という表をつくりました。

ずーっと悩んだあげく書いた息子の答えは。
『がっこうのすきなこと』は1位から10位まで『なし』
『がっこうのきらいなこと』は1位から10位まで『?(疑問符)が書いてありました。

 その表を私は仕事場のデスクの前の壁にはりつけて、
『この好きなところに1つでも何か書ければいいのに。』と願ったり、
 『この嫌いなところのはてなマークに何があるのか少しでも理解できれば。。。』と悩んだり、
イギリスに引っ越すまで息子の不登校と奮闘しながら毎日その表を眺めていました。

 不登校時代に『学校が嫌い』とは言わなかった息子。

「学校の誰が嫌い。」とか「学校のこういうことが嫌い。」とか何か明確なことを話すこともなく、何が理由で学校に行けないのかはっきりとした理由もわからないまま引越することになりました。

不登校の理由を知る為にがっこうのすきなこときらいなこと表をつくりました
『学校の好きなこと嫌いなこと表』


特別なことが特別でない学校

 「僕だけ特別でも誰も不公平だとか思わないんだよ。転校生だからみんなと同じに勉強できないのは当然。だから、宿題がでなくても当然と思っているみたい。」

「それだけじゃなくて、そのことを先生がみんなの前ではっきりと話したんだ。すごいよね。」

 転校生と宿題 
小学校の教室で起きた小さい出来事でした。

 しかし、息子はイギリスの小学校で自分だけの特別な待遇が社会的に許されることに驚きを感じていたのでした。

日本からの転校生だから
授業中1人だけコンピューターを使っていい。
 宿題も免除でいい。

特別な待遇を受けれるだけでなく周りの同級生もそれを当然のことだと認めてくれる。

特別なことが特別でないイギリスの小学校

日本の学校で同じように感じることができたならば不登校はなかったのかな。




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2014年1月21日火曜日

イギリスの学校教育 苦手なことより得意なこと コンピューターを利用した支援教育

不登校生と苦手なこと

息子は字を書くのが苦手です。

漢字を書くのは苦手と言う人は多いと思いますが、息子はひらがなを書くのも苦手でした。
字を書こうとすると固まってしまうことが多い息子。

 自分の名前をも書けずに、鉛筆片手に何十分も同じ姿勢で座っている息子。

小学校1年の2学期から学校へ行き渋りの息子の学力を心配して、家で勉強させたり宿題をさせようとした母親でしたが、コンピューターの画面がフリーズしたように同じ姿勢で動かなくなっている息子を前に何度あきらめたことか。

不登校時代、息子が書いたおつかいメモでさえ希少価値。思わず大切に取っておいてしまう程でした。

イギリスの教育とコンピューター

そんな息子が小学校5年生の時、イギリスの小学校へ転校する際に面接した副校長に息子が字を書くのが苦手だと伝えました。日本語はもとより英語など全く書けません。

『練習さえすれば字が書けるようになります』と言われたら、どう説明しようと悩む私。

すると「字を書くのが苦手ならコンピューターを使わせますから大丈夫です。」と即答が返ってきました。 「日本の小学校からの転校なら、英語の単語のスペルなどきっと知らないでしょうから、英語の時間はコンピューターのキーボードを使ってもらいます。」

イギリスの小学校には各教室にコンピューターがあります。長女のロンドンの小学校では、5歳児の準備学年(レセプション)の学級の時から休み時間にコンピューターを使って絵を書いたり言葉のクイズをしたりして、生徒達だけで遊んでいました。

苦手なことの多い息子でもキーボードならゲームで使ったことがあります。字を書くのと反対に、ゲーム機の操作は見ている者の目が回るほど素早くできます。

「キーボードさえ押すことができれば、あとはアシスタント・ティーチャーがついていますから大丈夫です。」という先生の言葉に、少し希望が見えてきました。

こうして、英語の授業は補助の先生が隣について息子はコンピューターを使ってクラスメイトと一緒に勉強できるようになりました。

「教室で僕一人コンピューターを使ってのだけど、クラスの誰も『ずるい』とか言わないんだよ。」と周りの目を気にしていた息子はほっとしたみたいでした。

イギリスの学校教育 苦手なことより得意なこと

日本で不登校生だった息子は苦手なことが多くありました。

苦手なことはしなくてもいいというイギリスの小学校。学校へ行くハードルが少し低くなりました。

イギリスの教育は苦手なことより得意なことに注目する。

手作りの自己紹介の名札には生徒の得意な物を描きます テニスとコンピューターを利用した支援教育
手作りの自己紹介の名札自分の得意なもの

中学校入学1日目にクラスメイトへの自己紹介の代わりに手作り名札を作って制服のTシャツに張ります。ステッカーに自分の名前と得意なものや好きなものの絵を描く簡単な名札。

絵をかくのも苦手な息子が描いた彼の得意なことは、「テニスラケット」と「コンピューター」でした。

「クラスの中で、コンピューターの絵を描いていた子も何人かいたけど、キーボードとマウスも描いたのは僕だけだったよ。」と嬉しそうに説明してくれました。

絵を描くのも自信がなくて苦手だった息子。
苦手なものがいっぱいあっても、1つでも得意なものが増えると自信がつくよね。




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2013年10月8日火曜日

イギリスの小学校 能力別授業

英国の特別教育支援(SEN)

日本の小学校から英国の小学校に転校した際、息子はSEN (Special Education Needs)の生徒となりました。SENの生徒とは、特別支援の生徒のことを呼びます。特別教育の必要な生徒とされて、学校で、その生徒に適したサポートを受けられます。

日本の小学校では、特別支援の教室がありますが、イギリスでは、特別支援の生徒はたいがい普通学級の生徒として、普通級の教室でクラスメイトと勉強します。 (親の要望や学校側で要求した場合は、特別支援校および特別支援級に入る場合もあります。)

息子も、普通学級の教室でサポートを受けながら、イギリスの小学校5年生のクラスメイトと一緒に、勉強できることになりました。

このときは、まだ、日本で何年も不登校生だった息子が、イギリスに来たからといって、学校に通えるかわからない状況でしたが、とりあえず、勉強に関しては、個別にサポートしてもらえるという約束をもらい、ほっとしました。

それにしても、英語圏以外の国からの生徒は、特別なサポートを受けられると言うのは、とっても嬉しいことです。

教室での能力別(レベル分け)授業

 さて、『SEN(特別支援)の生徒になった息子には、どんなサポートがされるのかしら?』と、思っていたある日。

 「算数の授業では、僕は、別の教室に連れて行かれて、勉強しているんだ。このグループには、同じクラスの子が3人いるんだよ。」 と息子が報告してくれました。

 『これが、特別支援のサポートなのかな?』 と思いきや。

「クラスの他の子たちも、それぞれグループに分かれていて、僕のグループは一番下のグループ。」と説明してくれた息子。

そういえば、イギリスの小学校は、英語と算数の授業は、能力別グループ分けをしていたんだ。

思い出したのは、ロンドンの小学校で、Year1(1年生)になった長女のクラス面談に初めて行った時のこと。 1年生の教室に入ると、教室の真ん中に、天井から算数・英語のグループと書かれた紙がつるされていました。

英語のグループは、「Letter(文字)」「Word(単語)」「Sentence (文章)」「Story(物語)」「Book(本)」と書かれた紙に、それぞれの紙に子供たちの名前が書いてありました。

「Letter(文字)」と書いてある紙には、子供の名前は2名程書いてあり、「Book(本)」と書かれた紙にも名前は4名ほど。 他の生徒は、「Word(単語)」「Sentence (文章)」「Story(物語)」の3つのグループに、5~8名の名前が書いてありました。

 算数は、「Circle(まる)」「Triangle(三角)」「Square(四角)」「Pentagon(5角形)」「Hexiagon(6角形)」と分かれていて、それぞれ子供たちの名前が書かれていました。

やはり、「Circle(まる)」と「Hexagon(6角形)」のグループの人数が一番少なく、その他の3つのグループに、ほとんどの子供たちが分かれていました。

 一目見て、能力分けされているのがわかります。

英語のグループ名は、「Letter(文字)」から「Book(本)」。算数のグループ名は、「Circle(まる)」から「Hexagon(6角形)」。これらのグループ名は、どちらがレベルが上のグループで、どちらが下か説明されなくてもわかりますね。
(念のために、説明しておきますが、「Book(本)」と「Hexagon (6角形)」がレベルが一番上のグループです。)

イギリスの小学校能力分けグループリスト
こんな風に教室につるされていた英語・算数グループ分けリスト イラストをかいてみました。

教室での保護者の学習ヘルパー

 このロンドンの小学校では、生徒の親がボランティアで授業のお手伝いをすることができました。

日本の小学校のような授業風景がみられる授業参観の日などはないイギリスの小学校。 どんなふうに授業しているのか見たくて、お手伝いに行きました。

 その日のお手伝いは、英語の授業。

娘の教室についたら、教室の外の廊下のところに、机がひとつおいてあり、机を挟んで、椅子が二つ置いてありました。

 『何に使うのかな?』とおもったら、この机は、英語のレベルの一番下のグループの子が、先生と勉強する場所。教室の外で、担任の先生とマンツーマンの授業。英語が読めない子もいるので、アルファベットから始めていました。

教室の中に入ると、子供たちは、3つのグループに分かれていました。 7、8名いるの二つグループは、床にグループごとに座って、それぞれアシスタントの先生により、授業が行われていました。

おや、教室の端っこに机をくっつけて座っている4人のグループ。子供たちが、一人づつなにやら一生懸命書いています。『何を書いているのかな?』とのぞいたら、文章問題に、答えを書いていました。

同じクラスの6歳の長女は、まだ、「apple」とか「book」とかようやく読めて書くようになってきたばかり。

『 まさか、一人でこの問題を解いているのかしら?』

「この問題は、何て書いてあるか読めるの?」と、この4人グループの一人に聞いたら、「もちろん。」という返事。隣の子は、長い長い文章を答えの欄に書いていました。

 同じ学年なのに、すごい違い。わが娘も、イギリス生まれでイギリス育ち。小さいときから、英語で学んできているはずなのに、どうして?

ボランティアの保護者は、この優秀なグループ4名のお手伝い。と言っても、どの子も、わき目も振らずに、一人でどんどん問題をこなしていくので、保護者ヘルパーの仕事は、落ちた消しゴムを拾ってあげたり、鉛筆を削ってあげたりするだけ。

イギリスの学校での子供の能力分けとは


子どもの能力に差があって当然。できない子にサポートが付き、できる子たちは、自分の能力を生かして好きにやって行きなさい。

イギリス流レベル分け授業というのは、こういうことなのかな?

不登校だった息子は、英国へ転校する5年生まで、毎日授業を受けることはなかったので、英語どころか算数・理科等も含めてすべての科目の習得や知識には大きなギャップがありました。

でも、イギリスの小学校でのレベル別授業のお陰なのか、取り残されることもなく、クラスのみんなと学校生活を楽しめました。最後には、6年生レベルの学力習得が満足にできているというお墨付きの成績表も手に入れて、無事小学校を卒業できました。

算数の授業、簡単でよかったよ。

不登校生だった息子は、日本でも、少しは個別で勉強を教えてもらっていたので、まったく算数ができないというわけではなかったのですが、日本で勉強した量は、毎日に学校に通っているお友達とは大きくかけ離れていて、当然。

ということで、彼のクラスでの算数のグループは、クラスで一番下のグループ。 いままで、 学校で英語で勉強したこともないので、英語の授業は、とうぜん、クラスで一番下のグループ。

『学校に行くことはできても、クラスで何も分からず引き目を感じるのでは。また、それが原因になって不登校になるのでは。』と、心配していた母でしたが。

「僕、今の算数のグループで良かったよ。算数の勉強が、すごく簡単。」と、我が息子は、明るい声で教えてくれました。

学校に毎日楽しく通えるようになっただけでも最高と思っていた母ですが、こんなに明るく言われると、勉強のことも心配になってきました。

できなくても大丈夫といえる自信

息子の算数のグループに、息子と良く遊ぶお友達の名前がなかったので、息子と仲の良い子たちは、どのグループなのかしら?と思わず興味心がわきました。

 「君の親友のJ君は、算数は、どのグループ?」 「もちろん、一番上のグループ。」

 「そのグループに入れるのは、いつになるかなぁ?」 プレッシャーを与えることになるかなぁと思いつつも、思わず質問すると。

 「そりゃ、一生無理でしょう。」とにこにこ顔ではっきりと断言した息子。

思わず、返事に詰まってしまいましたが、何よりも引き目も感じていない明るい笑顔の息子を見て、嬉しくなった私。彼の顔には、『勉強ができなくても平気』という自信がみなぎっていました。

こんなに堂々と開き直った息子を見ることは、小学校に入ってから初めてでした。

日本にいた時は、「みんなと同じでなくちゃ。」「こんなんじゃ駄目なんだ。」と自分を追い詰めていることが多かった息子。

「君は君のままでいいんだよ。」というメッセージをいっぱいもらって、ようやく、『できなくても大丈夫。』と思えるようになったね。

自分は自分。楽しく勉強できればいいよね。なによりも、楽しく学校に行けることができてよかったね。



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