自己紹介

自分の写真
Wales, United Kingdom
日本と英国を行き来する2人のバイリンガルキッズの母。ロンドンで生まれた子供たちを連れて日本へ。横浜で英語で創作絵本を作るキッズ・クリエイティブ・ライティングの教室を開き、英語の絵本の出版。小学校で不登校になった息子を連れて、またまた英国へ。イギリスの自然と息子のテニス・トーナメントの応援と野菜作りを楽しむ日々を過ごしていましたが、社会人学生として大学に入学。
ラベル 特別支援 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 特別支援 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2015年5月5日火曜日

ディスレクシアと日本語

日本のディスレクシア


 息子が英国へ引っ越す時に、 息子と仲良くしてくれた近所の上級生のお父さんが 「引っ越しちゃうと漢字を読んでくる人がいなくなって困っちゃうね。」 とつぶやきました。

 なんのこと?と首をかしげる私。

 小学校1年から不登校生の息子でしたが、なぜか漢字を読むのだけは好きでした。  息子の興味のあることに気がついた校長先生は、校長室での個人授業でも漢字を取り上げてくれました。ひらがなを書くのも億劫な息子ですが、なぜか漢字を読むのは得意になりました。

 不登校生の息子に声をかけてくれて一緒によく遊んでいた上級生のお友達。誘われてはその子の家に行って、一緒にコンピューターゲームをした息子。

 漢字が苦手なその上級生はゲームをしている時漢字が出てくると息子に読んでもらっていたとその子のお父さんが教えてくてました。

 初めて知った事実。不登校生でまともに勉強できずに学力が遅れている息子。 
たった一つの得意なことがこんなところで活躍していたなんて。

 不登校生でも誰かの役に立つことができるんだ。 
心に奥がポッと暖かくなった一瞬でした。

 中学校に進学したこの上級生がディスレクシアだったと知ったのはその後でした。

 イギリスではよく聞く「ディスレクシア(dyslexia)」という言葉。 
日本で聞いたのは、この友達が初めてでした。
 日本語でもディスレクシアってあるんだぁ。

ディスレクシアは聞いた言葉の綴りを書くことができない学習障害。 
初めて耳にしたのはイギリスでした。

イギリスのディスレクシア支援体制


 電話先の仕事相手に「今の言葉のスペルを教えて。」と聞いた時。
「僕はディスレクシアだから教えられないんだよ。電話では自分の名前のスペルを教えることもできない。」と言われてびっくりしました。

電話先の相手はロンドンの有名芸術大学院を卒業した現代作家。一緒に仕事をしていても頭のいい彼の学力を一瞬も疑ったことはありませんでした。読書も好きな彼はいつも本を手に持っていました。

とっても難しい本を読んだり哲学的なことを考えたりできるのに、自分の名前も書くことができないなんて、そんなことがあるの? それがディスレクシアとの出会いでした。

彼の高校は有名人を卒業生に多く持つ私立学校。2012年のロンドンオリンピッックでは、金賞受賞者2名を含めた8名の受賞選手を出しました。「僕の通っていたミルフィールド(Millfield)はディスレクシアのサポートが充実しているんだよ。」

ディスレクシアの支援教育で有名な英国の私立の全寮制学校 Millfield School
Millfield School (photo:テレグラフ紙)


2012年のオリンピック受賞者を多く出したイギリスのミルフィード校はディスレクシアの支援教育でも有名です。
2012年のオリンピックでは卒業生が活躍 (photo:the Daily Mirror)


ディスレクシアのレベルは個人差がありますが、イギリスでは学校や大学あるいは多くの資格コースでもサポート体制があります。ディスレクシアだから進学できない、資格が取れないということはありません。

 義理の姉が二人目を産んだ後に何を思ったか法廷弁護士の資格BPTCを取る為に、大学院へ入学。ディスレクシアの受験生はコンピュータを利用して資格試験を受けれます。ディスレクシアと認められた彼女でも無事卒業試験にも合格。

「単語の綴りが書けないからといって、個人の学力や知能力に限りがあるのとは違う。
少しの支援があれば個人の可能な限りの能力が発揮できる。」
そして、「それを認めよう。」という考えでしょう。

英語のディスレクシアに日本語教育がいい。

 英語は発音と単語のスペルの関係が複雑です。26文字のアルファベットの組み合わせで40以上の発音があります。ディスレクシアは英語ならではの学習障害だと思っていました。文字の発音と字が一致する日本語ではディスレクシアはないと思っていた私。 

不登校生の息子が独力で辞書や図鑑を読み進めていけるのは、この日本語の特性のお陰と思っていました。

 でも、漢字があったのね。 

確かにひらがなやカタカナは発音通りの綴りですが、漢字はいくつも発音があるし、発音と綴りの関係が複雑です。漢字と英語の単語はそういう意味で似ているかな。

 漢字のディスレクシアで困っている日本のお友達。でも、アメリカやイギリスの学校では英語のディスレクシアの生徒に日本語や中国語を習わせると習得がよいという結果が出ています。英語だとスペルが書けないけど、日本語だと作文が書けるようになったというアメリカのディスレクシアの13歳。イギリスの学校ではディスレクシアの生徒の為に日本語の授業を行っています。

ディスレクシアの認知度


最近になってディスレクシア教育の体制が整ってきたイギリスですが、義理の母曰く娘がディスレクシアとは大学院へ行くまで知らなかった。
「そういえば昔から学校の宿題で同じ言葉を3回違うスペルで書いていたけど。。。ディスレクシアなんて言葉も知らなかった。」
 イギリスでもディスレクシアという言葉が普及していなかった時があったのですね。

 日本ではまだまだ聞き慣れないこの言葉。 ディスレクシアと判定されても通っていた中学校ではディスレクシアと認めてもらえかった息子のお友達。

漢字が読めないのにどうやって入試試験を受けれるのだろうか。学校で認知があれば入試の際のサポートもあるのに。。。不安を抱えながら通える高校を探すご両親。不登校生の息子にもあう学校があるのではとあちらこちらへと足を運んだ昔の自分と重なります。

 漢字は苦手でもひらがなやカタカナはすごい速さで読むことができます。
社交的でスポーツも得意なお友達。

中学校のスポーツ部でも活躍して、高校は得意なスポーツでの入学が決まりました。

彼の才能を見分けた中学校の先生が推薦してくれました。推薦試験に無事に合格。
高校入試時期を待たず一足先に進学先が決まりました。

ご両親も予想していなかった結果。
 得意なことがあれば必ず誰か見ていてくれるのね。

 高校入学おめでとう。

できないことより得意なことに目を向けて元気に歩いていければきっとどこかへつながるのね。


ランキングに参加しています。よかったらご協力ください。

にほんブログ村 子育てブログ 不登校・ひきこもり育児へ 
にほんブログ村 海外生活ブログ イギリス情報へ にほんブログ村 テニスブログ ジュニアテニスへ

関連する記事
英国の特別支援 イギリスの小学校

参照 Dyslexics excel at Japanese, The Guardian, 2006
Unlocking Dyslexia in Japanese, the Wall Street Journal, 2011
London 2012 Olympics: The private school that produced eight of the Olympians,The Telegraph,2012
The Amazing Wilson: Schools' Cup final blow drove Peter to Olympic glory, The Daily Mail, 2012

2014年11月23日日曜日

保健室登校と保健室の先生


息子の登校渋りが始まりクラスで授業を受けられないようになって、初めて同じ学校で保健室登校している生徒さんがいっぱいいることを知りました。 

いつでも話せる保健室の先生


息子が学校へ行き渋るようになってから、一番コンタクトを取っていたのが保健室の先生。
保健室に行けば先生は必ずいるのですから、保護者にとっては一番接しやすい先生ですよね。

 担任の先生は授業もあるし忙しそう。廊下で立ち話というわけにもいかないし。

校長先生や副校長先生のところに「どうしたらいいですか?どうしましょう?どうしましょう?」と毎日相談に行くのも気が引けるし。

 こどもが不登校生になると何が一番大変かというと毎日の予定が立たないこと。

 元気そうなときもあれば、落ち込んでいたり、泣いていたり、お腹が痛くなったり、部屋の隅で丸くなって落ち込んでいる小学校1年生の息子をほっておいて出かけることはできませんでした。買い物に行くのもままならず、ずーっと息子の傍らに座っているだけ。

学校に行って相談もできないし、電話で相談したら息子に聞こえるし、どうしたらいいのだろう。それでなくても学校に行けないことに一番苦しんでいる息子。親が息子のことでひそひそ話をしているところを見せたくありませんでした。

学校にいつ行っても会えて、気軽に話せる保健室の先生は不登校生の母にとっては心のよりどころです。


保健室登校の児童数(平成13年・18年比較)文部科学省より
増える保健室登校生 保健室登校の生徒数 (文部科学省)

 初めて知った保健室登校

息子が学校に行き渋るようになってから、一番初めに薦められたのは保健室登校。

 「クラスでの授業が難しかったら、保健室でお勉強したらどうですか。」

学校を休みがちでも登校ができた頃には、保健室で先生と折り紙をおったり、先生のお手伝いをしたりできた息子ですが、不登校時代には保健室登校ができない日も多かった息子。

この学校始まって以来の正式の不登校生と言われて、息子以外に不登校はいないのだろうと思っていたのですが、学校には来ても教室で勉強できない子は他にもいたのでした。 学校には来ているから不登校生ではないけど、保健室登校をしている子がこんなにいるのかと初めて知った私。

いっぱいいるというと「何十人もいる。」みたいに聞こえますが、学校に行けない息子に付き添っていて毎日息子の側にいるだけの私にとっては、クラスでの授業に参加できなくて辛い思いをしている子が息子以外に1人でもいたら、いっぱいいるように感じます。

全校生徒わずか200名の小学校では、保健室登校生数が片手にあまる数でも多く感じました。 

保健室登校の生徒といっても、授業によってはクラスに戻る生徒もいたり、ちょっとだけ休みに来てからまたクラスに戻る子もいたり、1人で教室に戻れる子もいれば、先生が連れて行かないといけない子もいたり一人一人違います。

保健室の先生は各自のスケジュールを把握して、声をかけたり教室まで連れて行ったり、ベッドで休ませたり、保健室で宿題したり、折り紙したり。

保健室登校の生徒だけでなく、怪我をしたり具合が悪くなったりする生徒も来たり、くるくると変わる状況に保健室の先生は対応していきます。

 「すごーい。こんな細やかな対応があるんだ。」と心から感心していた母。

でも、そのくるくると変わる環境に息子は合わせるのが難しかったのでした。 

その上、小学校の保健室はとても人気の場所。休み時間になると子供達がいっぱい遊びに来ます。

息子のクラスのお友達も来たりして、息子がいると「どうして学校こないの?」と声をかけられたり、時には仲良く遊べる時もあったけど、クラスに戻ることができない日数が増えるほど、クラスの友達とだんだん顔を合わせるのが辛くなっていった息子でした。





 ランキングに参加しています。よかったらご協力ください。

にほんブログ村 子育てブログ 不登校・ひきこもり育児へ 
にほんブログ村 海外生活ブログ イギリス情報へ にほんブログ村 テニスブログ ジュニアテニスへ


2014年10月16日木曜日

校長室登校 4 校長先生の漢字カード

書かない漢字の勉強法

不登校生になり初めて校長先生の家庭訪問があった時、短い時間で息子のことを理解してくれた校長先生。

校長室で校長先生との息子の二人だけの勉強会が行われるようになってすぐに息子が字を書くのが苦手な事に気がついた先生。

「でも、漢字に興味がありますね。」と、またまた息子のできる部分を見つけてくれました。

ひらがなで自分の名前を書くのも苦手な息子。字を書くのにすごく時間がかかります。

鉛筆を握りしめたまま、机の上の白い紙を睨み続ける息子。

不登校性になってから宿題の紙に名前を書くところで断念する親子でした。

でも、字を読むのは苦にならないみたいです。漢字も読むのは大好き。

難しい漢字もシンボルやアイコンみたいに見えるみたいです。
「これなんて読むんだろう?」息子の興味をそそります。

これに目を付けた校長先生は息子にあった面白い漢字の勉強法を考えてくれました。

それは、つくり・へん等の部首を覚えることでした。
『部首の名前を覚えて、組み合わることで漢字を表現できたら』という発想でした。

 「いち」から「おおいかんむり」までの100の部首のカードを作る作業を校長先生と何週間もかけて行なった息子。

校長先生が用意しておいてくれた部首の紙をはさみで切って台紙に張って、裏にはその部首で作られている漢字のリストを貼る。お手本のカードができたら、それを見ながら、部首を書いて裏にはその読みを書いたカードを作る。

字を書くのが苦手な息子でしたが、簡単なつくりやへんならなんとか書けそう。
簡単そうな作業ですが、だんだんと部首の形も複雑になっていきます。時間をかけて少しづつ少しづつ作業が続いていきました。

書かかない漢字の勉強法 部首カード
100枚の部首カード


そのうちに「あの○○っていう漢字は、『○へん』と『あくび』を合わせるんだよ。」とか漢字を口頭で説明してくれるようになった息子。

 「あくび?」

「さんずい」や「うかんむり」や「にんべん」とかはさすがに覚えていますが、「ひらび」とか「ひき」とかいわれても全く形が頭に浮かんでこない母でした。

家でも辞書や本で習ってきた部首を探したり、「この漢字は『いちじゅう』を組み合わせるんだね。」と息子の漢字や語彙力は増えていくのでした。

 同じ漢字を何度も何度も書いて身体で覚えていくという勉強を小学生の時にした私には、この全く字を書かずにどんどん漢字を覚えていく息子に不思議さを感じました。

こうやって息子は、パズルのパーツを組み立てるように頭の中で漢字を覚えていったのでした。

そして、この漢字や語彙力があったことで、息子はイギリスに引っ越してから受けたGCSEの日本語の試験に合格できたのでした。



 ランキングに参加しています。よかったらご協力ください。

にほんブログ村 子育てブログ 不登校・ひきこもり育児へ 
にほんブログ村 海外生活ブログ イギリス情報へ にほんブログ村 テニスブログ ジュニアテニスへ


関連した記事

2013年12月31日火曜日

イギリスの中学校 入学までのていねいな橋渡し 

短かった小学校登校時代


小学校5年生になる4月。英国へ転校した息子は5年生をわずか2カ月で終わり、その年の9月には6年生になりました。
短かった小学校登校生活。

日本では小学校1年生から不登校生だった息子。

イギリスの小学校に通い始めて、毎日元気に登校し教室で授業が受けれるようになった喜びもつかの間。中学校への進学が迫ってきました。

不安だった中学進学。日本の統計では中学1年生が一番不登校生になる確率が高い。
せっかく毎日学校へ通えるようになったのに、ここでつまずかなければ。。。

大きな心配を胸にした小学校最後の年でしたが、イギリスでは、小学校から中学校への橋渡しはとても細かく予定されていました。

イギリスの中学校の入学までのスケジュール 

 9月 新学年 6年生
  • 新6年生になったばかりの9月に公立中学校から学校見学説明会のお知らせが届きます。
 10月 親子での中学校の見学説明会 
  • 説明会で渡される学校紹介には中学と小学校が連結した就学までの細かい橋渡しが記載されたスケジュールが入っていました。この就学前スケジュールには特別支援・視覚障害の児童への対応も記載されています。

11月 
  • 中学校の入学申し込み開始  インターネットで申し込みが可能
  • 中学校の新入生サポートチームが小学校を訪問し、小学6年生と面談
 12月 入学申し込みの締め切り
翌年2月 
  • 公立中学校からの学年チームリーダー生徒サポートチームの先生が小学校を訪問。 
  • 新7年生になる各生徒の情報を小学校と交換したり、6年生に中学校生活について紹介する。
3月 就学する中学校が決定。(就学通知はインターネットで見ます。)

4月
  • バディー(Buddies)チームの中学生が6年生を訪問。
  • 公立中学校の特別支援の先生の小学校訪問し、中学での特別支援についての説明。
 6月 
  • 新入学生の両親への説明会 
  • 中学生の演劇科の生徒が小学校訪問し、中学就学の説明をお芝居で披露。
  • 特別教育支援(SEN :Special Education Needs)又は、追加教育支援(AEN :Additional Education Needs)チームが訪問し、小学校の特別支援(SEN)の生徒とCATsテスト (Cognitive Abilities Test)という認知知能試験を行う。
7月 小学6年生が、中学校への訪問し、体験授業

  • この日に新7年生(中学1年)のクラス分けが行われて、体験授業は9月から一緒のクラスメイトと行います。(ロンドンの息子のお友達は、この中学体験授業が3日間にわたって行われ、連日中学校へ通ったそうです。)
夏休み 中学校での1週間の体験活動「サマー・ラーニング・フェスティバル」


イギリスの中学校 入学までの丁寧な橋渡し 就学前のスケジュール 特別支援も含めている
イギリスの中学校からの就学前スケジュール
イギリスの中学校への入学までの丁寧な橋渡し 就学スケジュール2 特別支援も含めている。
特別支援教育・視覚障害の児童への対応も
一緒に書かれている。

就学前の丁寧な橋渡しと夏休み前のクラス分け

息子は7月の中学体験授業では、理科や体育をしたそうです。名札を書いて入学する前にクラスメイトの顔や名前を知ることで安心感が増しました。

「一度会って名前を知ったり一緒に活動したりして、その後、夏休みがあって少し距離も取れたのがよかったよ。いきなり会って明日から仲良くしろって言われたら結構かまえちゃうよね。夏休みが真ん中に入ったから、9月の入学の日はよく知っている所へ戻るような感じがした。」と息子のコメント。

不登校生だったことや学力的にも不安がまだ残る中、地元小学校7校が就学するマンモス中学校への進学は悩みました。
 「少人数制の私立中学の方がいいのでは。。。」
公立校への申し込みが終わった後も私立校への申し込みも考えていました。

公立中学校からのきめ細かいアピールとスムーズな中学入学

しかし、息子は小6になってから続く学区内の公立中学校からのきめ細かいアピールコールに心を決めたみたいです。
「僕はこの公立中学校にいくよ。」

 そして、新7年生としての中学生活が始まりました。

新学期に入った最初の1・2日は、新7年生(中学1年)と新10年生(高校1年)だけが通学して、授業が行われます。イギリスの公立学校は形式ばった入学式がなく、特に行事ごとには固くなりやすい息子には不安の材料が1つ減りました。

最初の1週間目は新7年生だけが他の学年の生徒より早くお昼休憩が始まるようにに時間割が決められていました。その分、お昼時間も長くなり、ゆっくりごはんが食べられて、食べるのが遅い息子にとってはありがたいことでした。

やったね。登校率アップ

息子が中学1年生の1学期の終わりに持って帰って来た通知表には「出席率98.6%」と書いてありました。(風邪でお休みした2日間を除いた全日数を登校できました。)

イギリスの小学校と中学校の先生たちが共同で行うスムーズな中学校への橋渡しのお陰で、不登校だった息子でも入学前に新しい学校になじむことができ、元気に登校を続けられました。

小学校で不登校生だった時に「学校に行きたいけど、学校に行っても何が起きるかわからないから不安だ。」と言って布団の下にうずくまっていた息子の姿がだんだん小さくなっていきます。


ランキングに参加しています。よかったらご協力ください。

にほんブログ村 子育てブログ 不登校・ひきこもり育児へ 
にほんブログ村 海外生活ブログ イギリス情報へ にほんブログ村 テニスブログ ジュニアテニスへ

2013年10月8日火曜日

イギリスの小学校 能力別授業

英国の特別教育支援(SEN)

日本の小学校から英国の小学校に転校した際、息子はSEN (Special Education Needs)の生徒となりました。SENの生徒とは、特別支援の生徒のことを呼びます。特別教育の必要な生徒とされて、学校で、その生徒に適したサポートを受けられます。

日本の小学校では、特別支援の教室がありますが、イギリスでは、特別支援の生徒はたいがい普通学級の生徒として、普通級の教室でクラスメイトと勉強します。 (親の要望や学校側で要求した場合は、特別支援校および特別支援級に入る場合もあります。)

息子も、普通学級の教室でサポートを受けながら、イギリスの小学校5年生のクラスメイトと一緒に、勉強できることになりました。

このときは、まだ、日本で何年も不登校生だった息子が、イギリスに来たからといって、学校に通えるかわからない状況でしたが、とりあえず、勉強に関しては、個別にサポートしてもらえるという約束をもらい、ほっとしました。

それにしても、英語圏以外の国からの生徒は、特別なサポートを受けられると言うのは、とっても嬉しいことです。

教室での能力別(レベル分け)授業

 さて、『SEN(特別支援)の生徒になった息子には、どんなサポートがされるのかしら?』と、思っていたある日。

 「算数の授業では、僕は、別の教室に連れて行かれて、勉強しているんだ。このグループには、同じクラスの子が3人いるんだよ。」 と息子が報告してくれました。

 『これが、特別支援のサポートなのかな?』 と思いきや。

「クラスの他の子たちも、それぞれグループに分かれていて、僕のグループは一番下のグループ。」と説明してくれた息子。

そういえば、イギリスの小学校は、英語と算数の授業は、能力別グループ分けをしていたんだ。

思い出したのは、ロンドンの小学校で、Year1(1年生)になった長女のクラス面談に初めて行った時のこと。 1年生の教室に入ると、教室の真ん中に、天井から算数・英語のグループと書かれた紙がつるされていました。

英語のグループは、「Letter(文字)」「Word(単語)」「Sentence (文章)」「Story(物語)」「Book(本)」と書かれた紙に、それぞれの紙に子供たちの名前が書いてありました。

「Letter(文字)」と書いてある紙には、子供の名前は2名程書いてあり、「Book(本)」と書かれた紙にも名前は4名ほど。 他の生徒は、「Word(単語)」「Sentence (文章)」「Story(物語)」の3つのグループに、5~8名の名前が書いてありました。

 算数は、「Circle(まる)」「Triangle(三角)」「Square(四角)」「Pentagon(5角形)」「Hexiagon(6角形)」と分かれていて、それぞれ子供たちの名前が書かれていました。

やはり、「Circle(まる)」と「Hexagon(6角形)」のグループの人数が一番少なく、その他の3つのグループに、ほとんどの子供たちが分かれていました。

 一目見て、能力分けされているのがわかります。

英語のグループ名は、「Letter(文字)」から「Book(本)」。算数のグループ名は、「Circle(まる)」から「Hexagon(6角形)」。これらのグループ名は、どちらがレベルが上のグループで、どちらが下か説明されなくてもわかりますね。
(念のために、説明しておきますが、「Book(本)」と「Hexagon (6角形)」がレベルが一番上のグループです。)

イギリスの小学校能力分けグループリスト
こんな風に教室につるされていた英語・算数グループ分けリスト イラストをかいてみました。

教室での保護者の学習ヘルパー

 このロンドンの小学校では、生徒の親がボランティアで授業のお手伝いをすることができました。

日本の小学校のような授業風景がみられる授業参観の日などはないイギリスの小学校。 どんなふうに授業しているのか見たくて、お手伝いに行きました。

 その日のお手伝いは、英語の授業。

娘の教室についたら、教室の外の廊下のところに、机がひとつおいてあり、机を挟んで、椅子が二つ置いてありました。

 『何に使うのかな?』とおもったら、この机は、英語のレベルの一番下のグループの子が、先生と勉強する場所。教室の外で、担任の先生とマンツーマンの授業。英語が読めない子もいるので、アルファベットから始めていました。

教室の中に入ると、子供たちは、3つのグループに分かれていました。 7、8名いるの二つグループは、床にグループごとに座って、それぞれアシスタントの先生により、授業が行われていました。

おや、教室の端っこに机をくっつけて座っている4人のグループ。子供たちが、一人づつなにやら一生懸命書いています。『何を書いているのかな?』とのぞいたら、文章問題に、答えを書いていました。

同じクラスの6歳の長女は、まだ、「apple」とか「book」とかようやく読めて書くようになってきたばかり。

『 まさか、一人でこの問題を解いているのかしら?』

「この問題は、何て書いてあるか読めるの?」と、この4人グループの一人に聞いたら、「もちろん。」という返事。隣の子は、長い長い文章を答えの欄に書いていました。

 同じ学年なのに、すごい違い。わが娘も、イギリス生まれでイギリス育ち。小さいときから、英語で学んできているはずなのに、どうして?

ボランティアの保護者は、この優秀なグループ4名のお手伝い。と言っても、どの子も、わき目も振らずに、一人でどんどん問題をこなしていくので、保護者ヘルパーの仕事は、落ちた消しゴムを拾ってあげたり、鉛筆を削ってあげたりするだけ。

イギリスの学校での子供の能力分けとは


子どもの能力に差があって当然。できない子にサポートが付き、できる子たちは、自分の能力を生かして好きにやって行きなさい。

イギリス流レベル分け授業というのは、こういうことなのかな?

不登校だった息子は、英国へ転校する5年生まで、毎日授業を受けることはなかったので、英語どころか算数・理科等も含めてすべての科目の習得や知識には大きなギャップがありました。

でも、イギリスの小学校でのレベル別授業のお陰なのか、取り残されることもなく、クラスのみんなと学校生活を楽しめました。最後には、6年生レベルの学力習得が満足にできているというお墨付きの成績表も手に入れて、無事小学校を卒業できました。

算数の授業、簡単でよかったよ。

不登校生だった息子は、日本でも、少しは個別で勉強を教えてもらっていたので、まったく算数ができないというわけではなかったのですが、日本で勉強した量は、毎日に学校に通っているお友達とは大きくかけ離れていて、当然。

ということで、彼のクラスでの算数のグループは、クラスで一番下のグループ。 いままで、 学校で英語で勉強したこともないので、英語の授業は、とうぜん、クラスで一番下のグループ。

『学校に行くことはできても、クラスで何も分からず引き目を感じるのでは。また、それが原因になって不登校になるのでは。』と、心配していた母でしたが。

「僕、今の算数のグループで良かったよ。算数の勉強が、すごく簡単。」と、我が息子は、明るい声で教えてくれました。

学校に毎日楽しく通えるようになっただけでも最高と思っていた母ですが、こんなに明るく言われると、勉強のことも心配になってきました。

できなくても大丈夫といえる自信

息子の算数のグループに、息子と良く遊ぶお友達の名前がなかったので、息子と仲の良い子たちは、どのグループなのかしら?と思わず興味心がわきました。

 「君の親友のJ君は、算数は、どのグループ?」 「もちろん、一番上のグループ。」

 「そのグループに入れるのは、いつになるかなぁ?」 プレッシャーを与えることになるかなぁと思いつつも、思わず質問すると。

 「そりゃ、一生無理でしょう。」とにこにこ顔ではっきりと断言した息子。

思わず、返事に詰まってしまいましたが、何よりも引き目も感じていない明るい笑顔の息子を見て、嬉しくなった私。彼の顔には、『勉強ができなくても平気』という自信がみなぎっていました。

こんなに堂々と開き直った息子を見ることは、小学校に入ってから初めてでした。

日本にいた時は、「みんなと同じでなくちゃ。」「こんなんじゃ駄目なんだ。」と自分を追い詰めていることが多かった息子。

「君は君のままでいいんだよ。」というメッセージをいっぱいもらって、ようやく、『できなくても大丈夫。』と思えるようになったね。

自分は自分。楽しく勉強できればいいよね。なによりも、楽しく学校に行けることができてよかったね。



ランキングに参加しています。良かったら下のボタンを押してください。

にほんブログ村 子育てブログ 不登校・ひきこもり育児へ 
にほんブログ村 海外生活ブログ イギリス情報へ にほんブログ村 テニスブログ ジュニアテニスへ



2013年8月30日金曜日

英国の特別支援 イギリスの小学校

通知表の不思議

不登校で日本では勉強もなかなかできなかった息子が、
アルファベットも間違えずに書けなかった息子が、

イギリスへ転校して、わずか1年と2カ月で、イギリスの6年生と同じ学習レベルに達成できたと言うのはどうしてなのだろうか。

 小学校6年生学年末の通知表を見て、とても不思議に思いました。 

やはり、これはひとえに、イギリスの特別支援システムのお陰だろうと思います。

息子は、日本の小学校5年生になる春に、イギリスの小学校に転校しました。
 そして、イギリスの小学校で、息子はSENの生徒になりました。

 イギリスでは、特別支援は、Special Education Needs と言います。
これは、特別教育の必要性(特別教育支援)ということで、
特別な教育が必要な子へのサポートという意味です。 

日本で、不登校生の息子は、特別支援学級の生徒でもありませんでした。

 引っ越してから数週間後、ようやく近所の小学校に入学できることが決まり、
「不登校生だったことを言うべきか。」悩みました。 

転校したからといって、息子が登校できるとは限りません。
これが理由で、日本でも、他の学校に転校することをためらっていました。 

「英語での教育を受けてないどころか、日本でも小学4年生修了の学力には程遠いし、通えない可能性が大きい。」
 不登校生だったことを伝える為に、転入前に、親だけで学校に面接に行きました。 

面接した副校長先生は、息子が不登校生だと言う話を聞いた後、一言。

「息子さんは、特別支援の生徒としてのサポートが付きます。」 

そして、こう説明してくれました。

「でも、これは彼が不登校生だったということに関係なく、彼が英語圏以外の国から来た転校生だからということでつくサポートです。」 

「イギリスの特別(教育)支援は、身体的障害から学習障害・発達障害、海外からの転校生まで幅広く含まれます。」 

「だからと言って、サポートの内容に制限が付くわけではありません。サポートの内容は、この学校の特別支援のコーディネータが決めます。」

「この学校には、SENの資格を持つ教師は数名います。私もSENの資格を持つ一人です。つまり息子さんはどのようなサポートが必要かは、この学校の教師が決めて行きます。」

SEN(特別教育支援)のクラスメイト

イギリスの学校は、特別支援の子供は、特別に先生が一人つき、普通学級のクラスで勉強します。

 つまり、クラスに一人でも特別支援の子供がいると、そのクラスには、担任のほかにもう一人の先生が付くわけです。

 この面接の時に、娘が通っていたロンドンの小学校のことを思い出しました。 

娘のクラスには、学習障害(LD)の子がいました。
彼のためにアシスタントの先生がついていました。

学習障害があるからと言って、いつも先生が必要だとは限りません。
その子が、一人でできるアクティビティの時には、その先生は、クラスの他の生徒達のことの面倒をみてくれました。 

クラスに学習障害のある生徒がいても、先生が多くなれば、そのクラスの他の子たちもその恩恵を受けるわけです。 

娘のクラスメイトのイギリス人のお母さんが言った言葉を忘れられません。

 「(学習障害のある)○○君がいるから、うちの子のクラスには、アシスタント・ティーチャー(先生)がつくからラッキーね。」 

こうして、息子は特別支援SEN)の生徒として、

教室で、アシスタントの先生についてもらって、クラスメイト全員と一緒に、

あるいは、別の部屋で、個別に一人の先生と、

時には、少人数グループの取り出し授業など、

いろいろな形のサポートを、イギリスの小学校で受けていったのでした。




ランキングに参加しています。良かったら下のボタンを押してください。

にほんブログ村 子育てブログ 不登校・ひきこもり育児へ
にほんブログ村 海外生活ブログ イギリス情報へ にほんブログ村 テニスブログ ジュニアテニスへ

 関連した記事

2013年8月22日木曜日

英国の小学校の卒業式

不登校生だった息子が卒業式に出席できるとも思っていませんでした。


イギリスの小学校の卒業式


息子が英国の学校に転校して4ヶ月で、小学校最終学年になってしまいました。

小学校6年の学年末が近付くにつれて、
親の会から『卒業生のパーティー(Leavers' Party)』のお知らせやら、
息子や彼のクラスメイトの「6年生は卒業前の発表会があるんだよ。』という話やら出始めて、

「やはり英国の小学校でも何やら卒業に向けていろいろあるんだなぁ。」
と盛り上がりの低い母親。

以前、娘が通っていたロンドンの小学校では、日本のような格式のある「卒業式」は全くなし。

一応、卒業生のための会(Leaver’s assembly)は、行われるのですが、
日本の「卒業式」のような式典ではなく、

『卒業生のための朝の朝会』
といった感じのあまりいつもと変わらない卒業生の学校最後の日

ということで、
イギリスの小学校の卒業式には、あまり期待をしていなかったのです。

日本の学校に行かせてよかったと思った事の一つが、格式のある「入学式」や「卒業式」があること。

制服のない学校だと、親だけでなく、子供たちもスーツやドレスを着たり、襟を正して出席するだけに、大きな感動の日ですよね 。

ロンドンの娘の小学校は制服がなく、卒業式だからといって特におめかしをするわけでもなく。

やきもきするうちに、ようやく卒業数日前に学校からのメイルだけのお知らせが届きました。

「Y6 Leavers' Assemblyは、朝9時05分から始まります。」
(Y6とはYear 6の略で、小学校6年生と言う意味という)


英国の卒業証書(Graduation Certificate)
丸い筒に入ってもいなく、リボンと生徒の名前のラベルだけでカジュアル。






7月の卒業式とママたちのドレスコード


『両親揃って、日本の卒業式のようなスーツで行くのもかしこまりすぎるかな。』

こういうときは、イギリスで定番のスマート・カジュアル

普段着よりおしゃれなシャツとスカートとヒールのあるサンダルで学校へ。

学校の講堂にはすでに6年生のカラフルなドレスを着たママたちが、ずらっと座っていました。

<7 月の卒業式>

イギリスの短い夏を楽しもうと、ママたちの服装は、サマードレスが多かったですね。

今年は、特に、天候に恵まれたイギリスの7月。
暖かい日が続き、ジャケットを着ている人は少なかったです。

袖なしのサマードレス小麦色に焼けたヘルシーな肌を見せるのが、イギリスのファッション。
夏になると、フェイク・タンのローションを塗って、白い肌を黄金色にしているママたちが、いっぱいいます。

ジャケットを持って来る人もいますが、白や黄色とかパステルカラーの華やかな色。
夏らしいカラフルなサマードレスをさらに鮮やかにします。

パパ達は、ジーンズの人もいましたが、靴は革靴。

スマート・カジュアルのコツは、足元じゃないかなと思います。
ジーンズでも、スニーカーでなくて、カジュアルな革靴。

女性は、ヒールのサンダル。
日本だと、つま先のでるサンダルは、フォーマル感がなくなりますが、イギリスの夏のファッションは、フォーマルな時も、つま先のでるサンダル。

ただし、ヒールのある靴。

ヒールが高ければ、高いほど、フォーマル感がでると言う感じがします。

今年の北アイルランドのサミットでも、このスマート・カジュアルのドレスコードが話題になっていましたよね。

スニーカーを履いていた安部首相のことも、英国の新聞では取り上げていました。

やはり、スマート・カジュアルのドレスコードのポイントは、足元でしょう。
さすがに英国は、革靴の文化ですね。

英国の小学校の卒業式は、カジュアルな中にも伝統ありということでしょうか。


ランキングに参加してます。
よかったら、下のボタンを押して、ご協力ください。


にほんブログ村 子育てブログ 不登校・ひきこもり育児へ
にほんブログ村 海外生活ブログ イギリス情報へ にほんブログ村 テニスブログ ジュニアテニスへ


関連した記事