イギリスの同級生
日本での不登校生活3年以上のギャップを乗り越え、小学校5年生にして初めて同じ学校の生徒と毎日通学できるようになった息子。イギリスの学校へ転校して、最初の1週間目が終わった金曜日。
放課後、突然クラスメイトが訪ねてきました。
5・6名のクラスメイトの突然の訪問にびっくりした息子。(息子だけでなく家族みんなびっくり)
玄関のドアが開いても、玄関に入ることもなくドアの外に並んでこちらの言葉を待つ子供達。
その中の1人が一歩前に出て「君は転校生だから、この土地にも慣れてないと思うし、友達もいないと思うから誘いに来たんだ。僕たちと近くの芝生の広場でフットボールをしない?」と言いました。
始めて見る息子のクラスメイトの登場にときめく私と困惑している息子。
返事をしない息子に、その子はあわてて「転校生が来るといつもこうやって誘うんだよ。別に断ってくれてもいいんだよ。」と続けました。
それでも黙っている息子。
こんな場面、以前にもあったなぁ。
沈黙のにらみ合い
日本で息子が学校に通わなくなり始めた頃、クラスメイト数人が息子の所を訪ねてくれました。いままでは学校内外で仲良く遊んでいたお友達。
「あそぼうよ。」とみんな口々に声をかけてくる友達を前に玄関先で黙って突っ立っている息子。
誘いの言葉をいっぱいかけても、黙っている息子にしびれを聞かせて何も言わなくなった同級生達。
玄関で沈黙のにらみ合いが続きました。
最初は、子ども達だけにまかせようと少し離れた所から成り行きを見ていた母親ですが、あまりにもこのにらみ合いが長く続き、しかたなく「ありがとう。今日は無理だから、また別の日に遊びに来てね。」と助け船をだしたのでした。
それからは『またいつにでもお友達が誘いに来るかもしれない』と外から子供の声が聞こえてきただけで、二階のトイレに隠れてしまうようになった息子。
何度か誘いに来てくれたクラスメイトも、全く顔を出さない息子と断ってばかりの母親にだんだん足が遠のいていきました。
放課後のフットボール
イギリスでも、この最初の訪問から何度もクラスメイトがとっかえひっかえ訪ねてくれましたが、ドアベルが鳴るだけでこわがって隠れてしまう息子。そのうちに、息子のクラスのお友達は、放課後に近所の芝の広場で毎日のように遊んでいるらしいとわかりました。
学校から帰って来た息子に 何気なく声をかけて散歩に連れ出すと、案の定、近所の広場で息子のクラスメイト達がフットボールをしていました。
道路の反対側を歩いている私たちを見つけた子供たちは息子の名前を呼びながら手招きしてくれました。「一緒にフットボールをしようよ。」
その途端、固まって動かなくなった息子をその場に残して、道路を横切り、遊びの輪に参加した私。
しばらく呆然と歩道につっ立っていた息子も、さっさとサンダルを脱いで小学生に交じってフットボールをし始めた母親をみて、あきらめたのか道路を渡ってきました。
母親とバトンタッチでフットボールの輪に入った息子。「君、足が速いね。」とか「フットボールうまいね。」とか友達から声がかかります。
それから数日した放課後、また息子のクラスメイト数人が訪ねてきました。
隠れきれずに玄関で応対した息子に、1人の子が「この間、一緒にフットボールをしたから、君も少しは僕達に慣れたかと思って、また誘いに来たよ。」と話します。
「今日もこの間と同じメンバーで、広場でフットボールをしているから、一緒にどうかなと思って。でも、君もいろいろあると思うから、断ってくれていいんだよ。」
断ってもいいと言われたことで、少し気が楽になった息子。
「今日は悪いけど、疲れているから。」と答えました。(心の中で『残念!』と思っている母親)
その翌週、学校から帰って来た息子が「今日、クラスメイトと広場でフットボールをすると約束をした。」と元気に話してくれました。
家に誘いに行ってもどうもうまくいかないと気がついた同級生は『学校で約束をする』方法を考えたみたいでした。
「大勢で家に誘いに来ると僕が気後れするかもしれないから、だれか代表一人が迎えに来た方がいいか、それともみんなで迎えに来た方がいいかと聞かれたから、代表の人に迎えに来てほしいと頼んだ。」と嫌な顔をせずに話してくれた息子。(『無理やり約束を取り付けられた感じではないな。』と安心する私)
何度も玄関に通じる前庭の窓から友達が来るのを確かめている息子は、子どもの声がしただけで震えあがっていた頃とは違いました。
誘いに来たお友達代表と元気に出かけた息子。
制服のポロシャツに書かれた 息子へのクラスメイトの卒業メッセージ |
イギリス式友達の誘い方
これでもう大丈夫かなと思っていましたが、それから何度もクラスメイトがお誘いに来ても、相変わらず断ることの多い息子。
断る頻度の多さは『よく懲りずに誘いに来てくれるなぁ。』と思うほど。
そんな、ある日、友達の誘い方にあるパターンがあるのに気がつきました。
1.玄関のドアが開いても中に入らずドアの外で応対する。
2.何人で誘いに来ても、必ず1人の子だけが1歩前に出て代表者のように応対する。
3.息子を誘いに来る前に友だち同士で話して決めたこと(これから誰とどこでどのように遊ぶのか)を分かりやすく説明してくれる。
4.誘う理由を的確に説明してくれる。
5.誘いの言葉の後、必ず「断ってもいいんだよ。」と断りやすくしてくれる。
6.断られても「残念だけど、君も忙しいと思うから。また、誘いに来るよ。」と納得したことを伝える。
この誘い方が、相手のことを考えすぎて緊張しやすい息子にとても有効だったことがすぐ分かりました。
まず、受け答えをする相手が代表者1人で話しやすい。友達と集まる理由やこれから何が起きるかがわかりやすい。
その中でも一番の大きなポイントは、誘う方から『断ってもいい』と前もって言ってくれることでした。
イギリス流断り方断られ方
転校してから1年以上たち卒業式が近くなっても、相変わらずお誘いを断ることが多かった息子。「悪いけど、出かけたくない気分だから。」という息子の言葉に、つきあいも長くなってきた友人は肩をすぼめて腕を広げて『そうか、残念だ。』というジェスチャーと共に、首をかしげて『了解したよ。』と納得したといった顔つきで何度か頷いてくれました。
言葉なくして「一緒に遊べないのは残念だけど、君の都合もあると思うから分かったよ。」というメッセージを一瞬で表現した息子のクラスメイト。ハリウッドの子役スターかと思うような演技力。
やはりイギリスの小学校で日頃から行われている演劇(ドラマ)の練習の賜物でしょうか。
「誘いに来てくれてありがとう。」
こうして何度も友達の誘いを断ってきた息子が答えるようになっていました。
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