負け続けるテニストーナメント
息子よ。君は、何を求めて、トーナメントに出続けるのか。
数か月前まで、他の子達と混じって、テニスレッスンも受けれなかった息子。
トーナメントにでてくる子供たちは、何年も戦い続けてきた子もたくさん。 公式試合に参加し始めた子でも、『勝ちたい』と言う気持ちで、試合に臨んできている子ばかり。
何年ものパパの熱意と特訓のおかげか、サーブだけは、なんとなく様になっている息子ですが。10歳くらいだとラリーは結構できるけど、サーブはまだまだ練習が必要という感じのプレイヤーが多い中、息子のテニスはサーブだけみると、テニスがうまいように見えます。
それもあってか、小学校のテニス部ではファーストチームのリーダーに選ばれてしまった息子。
学校のテニス部でも、英国テニス協会(LTA)公式のトーナメントでも、参加当初は、なんとなく勝つこともできた息子のテニス。
学校対抗テニス大会の為に即席でできた小学校のテニス部では、テニスレッスンは受けていても、外部の試合に出ている子も少なかったのか、同級生は、学校のクラブ練習で、息子のサーブを見た時は驚異だったみたいでした。 「同じ年で、こんなサーブができるのかぁ。」
地元の小さなテニスクラブでのグレードの低い公式戦では、息子のサービスゲームで試合が始まり、ファーストサーブが、サービスラインぎりぎりにうまく決まったりすると『今の何?』 相手の男の子はコートで固まったまま動かない。
息子のファーストサーブで、エースがつづいたりすると、 思わず「今のサーブは、アウトじゃない?」とコート外で見ていた保護者から声がかかったりします。
「サーブが速すぎて、わかんない。」と首を振る相手プレイヤー。
ところが、結果はわが息子の負け。
どんな打ち方をしても、最後にボールをコートに入れたほうが勝ち。
速いサーブが打てなくても、ベースライン近くに深く打ちこめなくても、最後にボールが入ればいいわけです。
終わった後、息子の試合相手だった男の子は「彼のサーブが強すぎて、手が出ない。」と申し訳なさそうに、お父さんに話していました。『でも、君が結局勝ったのよ。』とつぶやく私でした。
小さいときから、大人といっぱい練習してきたので、ボールを打つ形は、一応、身についていてサーブもそうですが、スライスもそれなりに打てる我が息子。
英国には多いクレイコート キッズテニスには足に優しい |
クレイコートの試合で、ざざーっとネット際までコートをスライドしながら走り込んで、バックスライスで相手コートのサイドへ打ち込んだりすると、思わずギャラリーから「ローラン・ギャロス(全仏オープン大会)を見ているみたいだね。」と声がかかったり。
息子のサービスゲームで、サービスラインぎりぎりに沈めたファーストサーブに続いて、ネットまで走り込んでバックボレーとポイントを決めたりすると「ほーっ。」と試合を見ているギャラリーから声がもれたりします。 打つ姿が美しくても、結果は負け。
途中から見に来た試合相手のお父さんに「なんで、君の息子さんが負けていて、僕の子供が勝っているの?」と聞かれたりして。 『そんなこと、私に聞かれても、困ります。』
どんなに華麗な技を見せても、最後の1点で勝ち負けが決まるテニス。さすが、日ごろからサッカーで足を鍛えているイギリスの少年達。ラケット振る姿が様にならなくても、フットワークはラファエロ・ナダル並み。粘り勝ちで点を取っていく相手選手。
なぜ、我が子は勝てないのか。。。『勝ちたい。』その思いの違いかしら。。。
こんなに負け続けても、トーナメントに出たいのか?
試合の度、コートの後ろで、応援している親の方が精神的に疲れてきたりして。
それでも「次の試合も出るよ。」と二つ返事の息子。
遠征しても負けが続いて、親の心の中は雨ザーザー。それでも、息子にポジティブな励ましをと思い、ひきつらないように笑顔を作りながら「今日は、残念だったけど、がんばったね。」
すると『えっ、なに言っているの?』と不思議そうな顔で私を見た息子。
「僕、今日、すごいサービスゲームをしたんだよ。」
このリアクションには、励まそうとした親は思わず言葉に詰まりました。
『そぅ、そうだけど。今日の試合で、勝ったのは、その1ゲームだけなんだけど。。。』
不思議なことに、試合で負け続けても、息子のテニス友達から彼のプライドが傷つくようなことは一度も言われずに、相変わらず「フォームがきれい。」とか「あのサーブはすごい。」とかポジティブな声掛けばかり。
試合に負けても、一度も泣くこともなく落ち込むこともなく淡々としている息子。
息子のことをよく知っている他のジュニア選手のコーチが、一言。
「彼は、試合で勝つということでなく、他のことを求めて、テニストーナメントに出ているんだね。」
『息子よ。君は、何を求めて、試合に出続けるのか。』
いつか私は、その答えを知ることができるのかしら。
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写真: Fortis Green Tennis Club
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